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そやけど10万か5千万以上か、という無茶な分かれ目はないで

4月15日(金)

大阪のディープサウス・ラテンの大阪の異名をとる岸和田、それも9月の祭の方の旧
市の商店街のど真ん中で生まれ育ったので、いわゆる街的英才教育を受けてきた。
博打事もそのひとつで、それに親しみ結構好きな方である(もっとも張りはセコイが)。

オレの商店街の道1本違いの昭和大通りには、数年前創業50周年を迎えた「いゞ
ホール」というパチンコ屋があり、小学生の頃から夕食時などオヤジを迎えついでに
その技術を覚え、高校生の時は、同級生に麻雀と同様にその打ち方に舌を巻かせた。
そのパチンコおよび麻雀の「江流の打法」は、30年経ったいまでも同級生の間では
神話となっている。

パチンコは大学2年の時、成人式を迎えると同時に止め、麻雀も今や「つき合い程度」にしかしない。
今、打つのは「手本引き」、おっとこれはもちろん嘘で(そんなんしてたら組構成員
やんけ)「じゅんじゅん」のみである。
じゅんじゅん(カチカチともいわれる)とは、二枚制一人取りのオイチョカブで、岸和田旧市では祭の寄り合い、年末の火の用心、遠足の時のバスの中、旅行の際の旅館
の一室で盛んに行われているし、岸和田旧市のたばこ屋に行けば、ジッポーの石と同列に任天堂謹製の「大統領印」の株札(花札は置いてない店もある)普通に売られている。

前置きが多くなったが、宝くじのことである。

正月の3日、岸和田の旧い友人から返信の年賀メールが入り「細木数子がテレビで水星人プラスの人は4月9日東南(なぜか南東ではない)の方向で宝くじを買うと絶対当たる、と言ってるから忘れずに」とあった。

おれは宝くじをある時から定期的に買っている。それもデカイやつしか買わない。
これについてはもう一つ面白い話があるので、後で書くけれど、買うのは年末とサマ
ーおよびドリームジャンボだけである。

その4月9日の当日は、京都宮川町の「京おどり」に招かれていたのだが、時間を確
かめようとして手帳をみると「宝くじ東南」とメモがあった。
そういえば三宮はオレの家からバッチリ南東の位置である。
早速、京都に行くついでにJR三ノ宮駅の宝くじ売り場に行く。

あいにく売り切れである。
ほかにこの近所に売り場はないのか、とおばちゃんに尋ねたら、そごうとセンター街
にあるけど売り切れですどうもすいません、とのこと。
オレは「それはないやろ」と思ったが、ロトというのがある。
ええい、これでイッたれと思ったが、オレはロトとは何かを知らない。
「すいません5千円とこ、ください」といったら、キョトンとされた。

ロトというのは番号合わせの宝くじだそうで、その気の良い宝くじ売り場のおばちゃ
んは、何回かくじ引きがあることなど丁寧に説明しようとするが、「何でもいいので
5千円分、一回勝負」といって、勝手もいいとこデタラメに数字をマーキングした。

そして今日、駅で定期券を出そうとしたらロトの抽選日だった。
早速、宝くじ売り場へ。
「当たってます、10口分ですから5千円です」と5千円バック。
さすが細木さん、とその予言に驚くと共に、こういう時はうれしくて仕方がない。

オレは岸和田の人間だから、まず人の話は額面通りに取るようにと教育をされてきたし、それで他所に出てあまりに人を信用するから「人がいい」なんていわれている。
特にレヴィナス老師のいうところの「大人」つまりアブラハムの末裔としては、預言
者の話はアタマから信用するようにしている。

もう一つの宝くじ話はこうだ。

もう数年も前、『ミーツ』の大阪特集のキャンペーンで1日500冊なんてとてつもない販売をして頂いている「なんばミヤタ書店」の宮田社長に難波駅構内の店を案内
してもらっていた時、ちょうどドリームジャンボの売り出し中だった。

警備員が出て、店員さんがメガホンでPRをしている。
宮田社長は「ここもうちの店でんねん。毎回1億以上が出まんねん。うちはよう当た
りまんねん」のまんねん連打で、それならと「どこ列がよう当たるんでっか」と訊きなおすと「A列ですわ」。

これでもナニワ商人の端くれであるオレは、そういう時は「ほな、イッときまっさー」とばーんと1万円とこ(実際は1枚300円で千円おつりがきたけど)を 買った。
岸和田の男としての「ええとこ」を見せたわけである。

後日、抽選日が来て神戸のJR元町の宝くじ売り場で当選を調べてもらった。

30枚。自動検札機みたいなものにかけられ、「パラパラパラ~」。
すると何と、高額当選欄に1と表記されているではないか。

「高額当選されているようなので、近くのみずほ銀行へもって行って下さい。えーと
印鑑もです」そう言われて結果の書いた紙をもらい、表記欄を見ると「B」と印字されている。
「何等か分からないのですか?」
「ここでは…いえないルールなんです、でも1万円以上、高額当選に間違いないです

多分機械か何かの間違いとか、ニセ券とかいろいろあるのだろう。

さっそく「ひょっとして」と1万円以上の欄を見ると、1等2億円、前後賞5千万円、組違い賞10万円、2等1億円、3等10万円。

10万円か5千万円以上か。
それにしても、えらいこっちゃ。 これはひょっとして…。

オレはすぐさまタクシーに乗って家にハンコを取りに帰り、家の前で待ってもらって
県庁西のみずほ銀行に行った。

その時の気分は、今まで味わったことのない種類のものだった。

Bってどういう意味や。上からのBやと、ごせんまんえん、下からだと、いちおくえん。

クーラーぎんぎんのタクシーで、心臓バクバク、大汗かいて銀行へ着いた…。

「あのう、すいません宝くじ高額当選して、みずほへ行きなさいって言われたんです
けど」
とBと印字された紙と当選くじを見せる。

「ドリームジャンボですねえ」
「ちょっとこちらへ、どうぞ」
と、別コーナーへ連れて行かれる。

どうしょお、とりあえず普通預金に…
エーと、オレはりそな銀行でその口座番号は…

それから先の話、聞きたい、ですか………。

三等10万でした。

人間というものは欲目が出るもんで、Bだからもう最低でも5千万当たったと思いこ
んでいる。
なんせ高額に当たってる、ということは、2億、1億、5千万、10万のいずれかで、5千万以上の確率、4分の3やもんなぁ。

そやけど10万か5千万以上か、という無茶な分かれ目はないで。
これはカラダに悪い。

10万でもほんとはとてもとても有難いし、山手支店の担当の方も「滅多にない」ということだった。

けれども「三等10万円です、おめでとうございます」といわれて、なんか損した気分だった。
というより、がっくり来た。タクシーに乗ったことも後悔したほどだ。

その時は、ものすごい額を手にすると、よからぬことを考えてしまって、人間ダメになるからなぁ。
などと自分をなだめすかしたが、人の欲というのは、かなしいもんである。

コメント (2)

こーちゃん:

江さん!宝くじの話、最高にリアルやわ。
「いくらあたっているか教えてくれない」というのは、これではじめて知りました。まわりに当たったヤツ、おらんし。
しかし5千万か10万か…われわれ凡人には、たまらん落差やなあ。

カネというのは、人と現実をガッチガチに固定する。
そんなコワさを知っているから、われわれは日常、
カネとあんまり関わらないように過ごしているのですね。

こーちゃん:

江さん!宝くじの話、最高した。
読みながら「そんな気分」になりました。
しかし、アタリ金額を教えてくれないんですね。はじめて知りました。

5千万と10万の「落差」、まさにそこにこそ宝くじの欲望をグルーヴさせる回路があって、カネの存在感がつねに剥き出しな分だけ、われわれにはリアル過ぎて痛い。そやから、できるだけカネのことを考えないような道を選ぶクセが染み付いているのかも、ですな。

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2005年04月16日 18:29に投稿されたエントリーのページです。

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