8月29日(日)その午後の部
本町の映画の撮影があるので、気になって見に行く。
というのも、去年の暮れに大阪商工会議所を通じて「ビートキッズ」という小説が映
画化され、その中でだんじりのシーンがあり、なんとか撮影が実現できないかとのオ
ッファーがあった。
その後、プロデューサーの方がミーツ編集部に来られて、できれば紀州街道あたりで
撮りたいとの由、それならということで、たまたま親友のH出が平成16年度は本町
若頭筆頭なので、紹介することになった。
律儀な彼は東京からの監督やスタッフを寄り合いに呼んだりして、町会・世話人始め
町内の調整にあたり、無事この日の撮影になった。本当に、雨が降らなくて良かった
。
うちと同じくコマ替えをしている堺町のだんじり小屋を過ぎ、市の水道局前に行くと
、だんじり囃子の太鼓の音が聞こえ、町旗と幟旗で化粧した本町のだんじりが見えて
きた。
普段、祭当日はこちらもだんじりを曳いているので、こういう格好で本町のだんじり
を紀州街道で見るのは初めてだ。だんじりの高さといい幅といい、さすがに江戸時代
の情緒残る旧い町並みにしっくり来ている。
ガードマンの制止お構いなく、顔見知りの地元のギャラリーがだんじり近くで集まっ
て見ている。だんじりが動くとのことでロープが張られ、夏空の下、大汗を浮かべな
がら「下がって、下がって」と若頭が観客をどける。その中に後輩のS水くんがいて
、「江くん、見にきたんけ」といわれてちょっと恥ずかしかったが、キャストのこと
を訊くと、トヨエツが屋根に乗るそうだ。
ゆっくり並足で動くだんじりの大屋根には、豊川悦司が大工方の半纏で乗っている。
小屋根から落下防止のロープがうまいこと撮影アングルから見えないように付けられ
ていたが、これはやはり見ている方がハラハラする。というのも、やっぱり本物と違
ってどう見てもおかしな動きの踊り方だからだ。
こういう撮影は、うちの町でも経験があるが、一旦受けてしまったら、町を上げて最
後まできちっと協力するのが岸和田のいいところだ。
1時半からは町内会議。 下から青年団、後梃子拾五人組、若頭、前梃子、大工方、
世話人の祭礼三団体の幹部、そして町会長ほか町会の方々も出席する。
会議に先がけて、筋海町の町会長と曳行責任者が来られていて挨拶。毎年恒例のこれ
は、今年も五軒屋町より先に出発して当町に入ることを諒承してほしい、とのお願い
の趣旨だ。
町内会議は本年度曳行責任者の議長進行の元、5日試験曳きの出庫時間と出発定位置
までの段取りを若頭筆頭より、曳行コースが青年団より発表され、その際の注意点を
昨年の反省を交えて意見交換。ほんの1時間足らずの会議。
その後は、鳴物係が稽古中のだんじり小屋に戻り、鳴物OBの面々があれこれと意見を
言う。
このところだんじり囃子のリズムが変わってきている。時代の流れといってしまえば
その通りだが、やっぱり違う。
「鉦は、とん・とん・とん、と違うやろ。ちん・き・ちん、や。2拍目を遅らせんと
、田舎の祭や、岸和田違う」
「どん・どん・どん、はあかん。で・でーんや、裏叩かなあかん」
「こんな早い、曳き出しあるかい。大っきい、このだんじりに似合えへん」
などと、だんじりの回りで大声でやいやい言うが、なかなか説明しにくてもどかしい
。若頭のみならず拾五人組のうるさい連中も加わって、鳴物責任者に寄ってたかって
言って聞かせようとしていると「ビール、飲んでください。ドライでいいですか」と
缶ビールの差し入れがあった。
「おお。ほたら、蔭で休憩するか」。びりっと破っただけのするめや乾き物の袋に手
を差し込んで、そのアテで缶ビールを飲みながら世代がバラバラの鳴物OBの談義が盛
り上がる。
昼下がりのビールに少し酔ったか「合わして叩いてるだけや、曲になってへん」「あ
かん、センスない。五軒屋の鳴物も終わりや」とOBたちは悲観的になってくる。
ほんまに頼むで、今年の鳴物係の諸君。