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F-1にも負けない!だんじりの足回りは「コマ替え」の精度で決まる

8月29日(日)その午前の部

コマ替えが午前9時からある。

ツツミ巻きとコマ替えはだんじり祭準備の最重要項目だ。

家でぐずぐずコーヒーを飲んだり、新聞を読んだりしていたら、これはいけない15
分過ぎていた。こんなことは、責任者をやっていた去年なら考えられない。だんじり
小屋の鍵もずっと預かっていたし。やっぱり今年は責任者ではなく顧問だ、という気
楽感というかのんびり感がある。

だいぶ遅れてだんじり小屋に着くと、すでに後コマを入れているとこだ。このセット
は5日の試験曳き用だが、13の試験曳きと14日15日の本祭の間あと2回、コマ
の減り具合やバランスにより、場合によっては3回4回と交換する。

松材のコマの直径は2尺あまり、約60センチである。幅はそのほぼ半分。計ったこ
とがないから重さは分からないが、大人一人では動かせないほど重い。60キロはある
だろうか。

直進しかできない構造のだんじりの遣り回しは、コマを路面にドリフトさせて曲がる
。実際には路面でコマを削りながら曲がる感じだ。当然のこと、雨天の際は滑りすぎ
るから注意とちょっとした技術が必要である。

だから曲がり角にはどこでも削れたコマの後がつく。削られて残った木片は、さきイ
カのみたいで「するめ」などと言われていて笑えるが、コマのグリップが強すぎると
曲がらず、逆に弱すぎると曲がりすぎたり不安定になる。だからコマ替えの当日まで
水を打ったムシロをかぶせておいたり、乾きすぎないように細心の注意を払う。

そのコマに、ドビといわれるホイールつまり軸受けをかち込んで両方からボルトで締
める。その軸受けとシャフトつまり芯金とのなめらかさが命で、うちの町は芯金に摩
擦を極力抑えるようにメッキ加工がしてありビカビカに光っている。

そして軸受けの内側に各町独自の「企業秘密」つまり工夫がある。うちが採用してい
るのは「オイルレス」加工のドビだ。紙屋町などは「モスター」と呼ばれるJRの貨
車の軸受けで使用されているハイテクばりばりの素材を内蔵してある。一時流行った
ベアリングは、摩擦こそ極小だが、回転の仕方が安定しないので今は使用する町はあ
まり聞かない。

あらかじめ芯金とドビの内側は洗浄スプレーで洗い、両方に潤滑グリスを塗る。グリ
スは「うちはモリブデン入りでマクラーレンと同じや」とか「米軍の戦車で使われて
いるヤツ」とかほとんど冗談のようだが本当である。

遣り回しのための足回りが命、なのである。

交換の手際もF-1顔負けだ。

ドビ装着こそ力自慢のものがカキヤ(土木作業で杭を打ち込む際のデカイ槌)でかち
込むが、そのあとはボルトは唸りを上げる大型電動レンチで締め、大型トラックに使
うコンプレッサーのジャッキを駆使して3トンあまりのだんじりを上げ下げし、前後
それぞれの芯金とコマのセットを取り外しする。

ミリ単位で調整する前後のアザ(台とコマの遊び)まで説明すると、あまりにもエキ
スパート仕様になりすぎるのでこのへんでやめるが、「今年は1時間25分、新記録
や」などと言いながら数十人の男が「現場作業」顔負けの手の込んだ重作業をこなす
わけだ。

それを遠巻きに熱心に見学している人も多い。今年はわざわざ富田林からのギャラリ
ーもいる。

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2004年09月02日 22:41に投稿されたエントリーのページです。

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