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シシャシツ嫌いな極道娘

3月31日(金)

楽しかった夜の回想シーンを夢で見ながら悔し涙に濡れた夜が明けると、案の定、少々二日酔い気味。しかし、今日はミーツの新店紹介の原稿2本と次号から始まる映画の連載コラムの原稿と、あんなことこんなことをしなくてはいけないので、まず最初に一番重そうな荷物から片づける。

先日、東京出張で歩きすぎてブーツのかかとが折れて(ブーツのかかとが折れることを初めて知った。大丈夫かシャルル・ジョルダン。ていうか、手持ちの靴の7割が足の形に合うからとシャルル・ジョルダンなんだけど、って思ってて穿いていたら外反母趾になったってことは実は合ってないのかもなんだけど、玄関先に並んでいるヒールのローファーのラベルにふと目をやると「チャーリー・ジョーダン」と読めて、にわかにそのヒールの繊細なローファーが無骨でアメリカンなバッシュに思えて、なんだよ、けっ、となり名前は重要だとつくづく思った)えと、どこまで話したっけ。そうそう、「一回見てみたい」という気持ちに「ワタシはそんなこと思う田舎もんじゃねーぞ」と嘘をつきたい気持ちでいた六本木ヒルズだが、ちょうどいい具合に(?)ヒールが折れたので、六本木ヒルズなら靴修理ぐらいあるだろう。ライブドア元広報の乙部綾子だってヒールが折れたら嘘泣きしてもどうしようもないから修理に行くってもんだもの。

なんて思いながら向かった六本木ヒルズにて、驚いたのは白人の多さであった。神戸や京都に住む街に溶け込んだ外国人とはまるで雰囲気を異にする、まるでGHQ占領下のニッポンで威張るガイジーンの如く白人ヤッピー風。東京はガイジンが多い街だが、六本木はその比率を一人でスタイリースタイリーと上げていた。ホワイトでパツキンの女子は高い鼻をさらにつんとさせ、    の性格を悪くしたような男子のその腕にはニッポンバカ娘がまとわりつき、私のような東京異邦人が「うわあ、ここはえげつなくオモンナイ街やなぁ」と声なき声で叫んでる横を、何が嬉しいのかワァォワァォヘェイヘェイとデカい声の英語で騒いでいる。おそらくその中の多くが、世界の市場を渡り歩く優秀なビジネスマンやその周辺なんだろう。似たような人種を、返還前の香港・蘭桂坊(ランカイフォン)で見たことあるぞ。首都ニッポンの東京の、最先端(なの? 騙されてる?)の人工街・六本木ヒルズで、日本はやっぱりアジアの遅れてきた近代国家なんだと実感した。経済の話ではない。街の未熟さというか、不安定感。まあ、東京在住の多くが「六本木ヒルズは行ってはいけない場所」と言うのだから、そういう場所なんだろうな。

とかいうあたりから、ある映画の紹介をする(『恋する惑星』じゃないよ)。ミーツで始まったその映画連載は、「試写室の外から言わせてもらえば」というタイトル通り、試写室で観た新作映画を紹介するコラムではない。ワタシはわりに映画をよく観ている方で映画は好きなんだけど、ミーツ在籍時代に配給会社から試写室のご案内を頂いても結局、一度も行かなかった。高校時代は「スクリーン」に応募してまで行ってたのに。なぜだか知らないが、シシャシツというものがどうも苦手な気がしたからだ。行ってもないのに。というところに、理由があるような気がする。

シシャシツには、シシャシツに来る人たちがいる。当たり前だけど。そのシシャシツな人たちというのが、なんだか面倒臭そうで足がすくむのである。シネマな身内のパーティギャクで笑ってそうで、カルトQに出たことありそうで、超ウルトラドンで早押ししてて、ディビット・リンチやデヴィッド・クロネンバーグが好きでとかいうのも額面通りなのかそうじゃないのか不明で、新しいイランの監督とか東欧の俳優とか知らないと意地悪されそうで、ワタシだってジャッキーは「少林寺木人拳」から観てんだからっ、というと逆に深い会話になりそうで…とてもその中に入っていけそうもない気がするのである。いや、妄想だけど。おそらくシシャシツな人たちがシシャシツで観た映画評というものが、ワタシをそうして脅かすのである。たぶん、こういう風に心がひねくれることが、育った環境が悪いということなんだろう。

なもんで、こうしたことを言ってしまった今、もう本当にシシャシツには行けなくなった。たぶん、シシャシツから招待もこなくなるのだろう…ということも、妄想かもしれないけれど、そんな風に思うワタシは、季節外れの魚のような、鮮度は悪いけれど、実は〆めたりなれたりさせると美味しい寿司のネタのような、映画の話を書こうと思う。そんな寿司ネタはシシャシツではなく、街の酒場やカフェや服屋や路地にしか転がっていないから、そんなところで見つけたネタで加工する…ということで、「試写室の外から言わせてもらえば」という負け犬の遠吠えみたいなコラムを書かせてもらうことにした。ちなみに、第一回は4月1日発売号で、最終的に紹介する映画は「極道の妻たち/死んで貰います」。この原稿書いた後で、内田先生にこの長屋の名前を付けて頂いたんだけど、やっぱり鉄火場勝負は運命づけられていたのね…。

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2006年04月01日 11:02に投稿されたエントリーのページです。

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