バイクは男の乗り物なのだ

9月12日(火)

先日、ふと新聞の日曜版を見ていて目を引いた写真があったのだが、それからというもの、どうもその写真のモノが気になって仕方がなく、インターネットでそのモノについていろいろ調べたりするうちに、ますますそれが気になってしまい、真剣に購入を検討しようかと思うまでになってしまったモノがある。

Y社製の「電動バイク」のことである。

いや、別にふだんプリウスに乗っているからって、自分では環境問題に特段の関心を持っているというわけではない。プリウスに乗り換えたのは、単にガソリン代が高いからというのがその理由の最たるものであって、「地球に優しい」だの「クリーンエネルギー」だのということは毫も考えが及ばなかったというのが正直なところである。

だから、「電動バイク」に関心があるとはいうものの、その関心は主にそのデザインとコンセプトに向けられているのである。

以下は、そのY社のHP(http://www.yamaha-motor.jp/ev/ec-02/index.html)より。
“コンセプトは「ミニマム・ファン・コミューター」。部屋に入れてディスプレイしたり、車に載せてモバイルしたり、いつもいっしょにいたくなる。走らせてみると、まるで未来の感覚。大人の時間を楽しむ、感性を刺激する、EC-02誕生。”
そう、ずばりそのバイク名は「EC−02」である。

「コミューター」とは、たぶん「定期券通勤者」のことではなく、「地方都市間の短距離を飛ぶ小型航空機」の意で使用されているのであろう。その名のとおり、たいへん小型のバイク(全長1,385mm、全高935mm、シート高715mm)である。車両重量は47kg。とにかく、カワイイのである。

電動バイクとあらば、当然のことながら排気管はない。ガソリンを積載するタンクもない。エンジンを潤滑するためのオイルもない。ということは、車に積んでも臭いがしないし、車載中に倒れたりしてもオイルや燃料がこぼれるおそれもない。そういうことも考えたのであろう、EC−02のハンドルは六角レンチでネジを緩めれば、まるで犬が耳を垂れるように折り畳めてしまうのだそうだ。

例えば、こんな使用法が考えられる。テニスコートに行く。駐車場に車を停める。後部座席に積んだEC−02を徐に降ろす。ラケットを入れたリュックを背負い、メットを被ってEC−02に跨り、スイッチを入れる。バイクは音もなく発進する。通常モードでの走行は、最高時速30キロだそうだ。ゆるゆるとテニスコートまで転がす。コート近くにバイクを停め、さあテニスの練習!

うーむ、いい感じだ。

さっそく、家に帰って不肖の妻にそのことを話してみた。
「あのさあ、電動バイクがあるって知ってる?電動だからガソリン代かからないし、充電も1回16円ほどの電気代で済むみたいで、家庭用電源で充電できるんだよ」
「ふーん。そんなバイクあるんだ」
「値段は20万円ほどするらしいんだけど、プリウスみたいにクリーンエネルギー何とかで、4万円のキャッシュバックがあるんだって」
「だけど、バイクなんて、あなた乗らないじゃないの」
「…」
さすがは我が妻、「もー、また買わなくてもいいもの買おうとしてるんだから」と察知し、先手を打ってきたのである。
「いや、あーたが駐車場から職場まで行くのに使用している自転車よりはいいかなと思ってさ」
「えー、自転車の方が運動になるからからいいよお」

漸次沈黙。

「でも、これから娘の進学とかでいろいろと物入りになるから…少しでも節約するために車をやめてそのバイクで通勤しようかしら」
「そ、そうだよねえ。いいかもしれないね。少なくとも、車よりは維持費とかかかんないよね」
「ガソリン代とかも最近けっこうかかってるのよね。請求書見ると、前よりずいぶん高くなってるような気がするもん」
「問題は、あんまりスピードが出ないから、バイパスとか交通量の多い道を通ろうとすると、ちょっと危険かもしれないよ」
「そうそう、ワタシ高校生の時は自転車通学だったんだけど、車に当て逃げされたりしたこともあるのよ」

買うとも買わないとも結論は出ないままに、バイクについての会話は以上で終了。でも、少しは脈があったような。確かに、20万円は安い買い物ではない。でも、従来のバイクとはひと味違う感触が得られるのではないかという密やかな期待もある。

バイクっていう乗り物は、得も言われぬ爽快感がある。風を切って走るということに、一種のロマンを感じるのかもしれない。でも、そのロマンも最高時速45km(パワーモードの場合)となると、爽快感とはまた別の感興があるのかもしれない。

うう、乗ってみたい。バイクは、誰が何と言おうとも、男の乗り物なのである。