反国防的活動

 那覇から帰って来ました。前回の訪問時には、西田参議院議員の「ひめゆり失
言」がありました。今回も、辺野古での沈没事故。もしかしたら私は疫病神では
......などと、一瞬自意識過剰になりましたが、よく考えてみると毎日のように同
じような事件が、沖縄ではおこっています。


 辺野古問題の始まり

 たとえば、先日の「沖縄タイムズ」の第一面の記事。


政府、沖縄県内移設に固執 米軍ヘリ岩国案に反対 日米協議「前提損なう」
 普天間返還合意、きょう12日で30年
、沖縄タイムス、

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1815381

 30年前、せっかく「海兵隊の大型輸送ヘリコプター基地を普天間から、広島県
の岩国への移転」を米側が提案してきたときに、こともあろうに日本政府が話を
潰してしまったというものです。移転話が表に出て、「本土」での与党票を減ら
すことを危惧しての政策なのでしょう。「日米安保の負担は君たち離島の二級国
民が一手に引き受けなさい」という、自民党政権からの大変分かりやすいメッセー
ジになっていました。
 反対理由は「海兵隊との一体的運用を損なう」とのことですが、天下の合衆国
海兵隊に軍事指導しちゃったわけです。随分大胆な話です。おそらく鼻で笑われ
たと思われますが、これが辺野古の新基地建設につながったのですから、笑い事
ではすみません。
 けれども、沖縄タイムスのスクープは県外のメディアでは、大きな扱いにはな
っていません。県民と県外の間で認識ギャップが、少しずつ広がってきているよ
うです。


 維新らしい斬新な失言

 同じ紙面のお隣の記事。これは最近の話です。
 那覇に来ました。前にもこちらで原稿を書いた時、西田参議院議員のひめゆり
失言がありました。今回も、辺野古での沈没事故。もしかしたら、日頃行いの悪
い私のせいで......などと、一瞬自意識過剰になりましたが、よく考えてみると、
規模の大小はあれ、同じようなタイプの事件は沖縄で毎日のおこっています。


PFAS「反国防的運動に使われているのでは」 衆院環境委で維新議員が持論 
汚染不安の訴えに誤認識、沖縄タイムス


https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1815382

維新所属の北関東の地方議員が、「一連の沖縄でのPFASへの抗議行動は、思
想的に偏った反国防運動だ」という趣旨の言いがかりをつけた、という話です。
「反国防」とはまたすごい表現ですね。とりあえず一回、笑っておきましょう。
 発言のなかで、その議員は「PFAS(の有害性は)医学的にも科学的にもま
だ証明されていない」ということを上げていました。この部分だけなら、私も支
持できます。有機フッ素化合物(以下PFAS)には膨大な種類があり用途も毒
性も違うのに、一括りにして議論されています。問題の発見直後は仕方ないにし
ろ、こんな大雑把なくくりで規制だの安全基準だのと言い出すのは、とても科学
的態度とは言えません。けれども、この議論を持って行く相手は沖縄では無く、
環境庁のはずです。
 PFASについては、環境上の努力目標であったのが、本年4月から規制化さ
れたような状況ですから、他県民と同様に沖縄県民が不安に思い、水道関係者が
対応するための協力を米軍関係者に求めるのも当然のことでしょう。


 軍用機には消火器がつきもの

 先日、嘉手納基地での「アメリカフェスト2026」(要は米空軍の「学園祭」)
を見てきました。わずか数時間の滞在でしたが、米軍基地内は実質治外法権だと
いうことがよくわかりました。
 入場者に野戦用のタンクから飲料水を呑ませたり(食品衛生法違反?)、機関
銃の台座に子供を座らせて引き金を引かせたり(弾は無くとも銃刀法違反?)、
やりたい放題。圧巻は飛行場上空での花火大会です。羽田や関空で同じ事をした
ら、所轄の消防署が激怒するでしょう。
 会場ではオスプレイを含む10機程度の米軍機が展示してあったのですが、そ
れぞれ機首の前に大型洗濯機サイズの消化器がおいてありました。戦闘が身近に
ある米軍は、「飛行機は時には炎上するものである」と、はじめから織り込んで
いるようにも見えます。ちなみに、横にあった航空自衛隊機の前には消化器はあ
りませんでした。
 おそらく、嘉手納では通常の空港よりは頻繁に消火訓練が行われているはずで
す。また、滑走路の舗装も通常の空港よりかなり簡単なもので、ひび割れも多く
何か液体を流せば簡単に地下水層まで染みこむでしょう。基地周辺には大規模な
化学工場はありませんから、常識的に考えればPFASの出所は米軍しか考えられま
せん。水道局が、詳しい調査をさせてほしいと言うのは当然です。
 水道水は県民だけでなく、米軍将兵や家族も飲むものです。安全な水を提供す
るのは、日米地位協定上も義務のはずです。水道関係者と基地関係者との間で技
術的に協力しあえる部分はあるはずで、こういう地道な活動を通じて人間どうし
の、あるいはプロとしての信頼関係を現場で作ることは、「国防上」も必要なこ
とだと断言できます。


 国防の基礎は不愉快さの最小化にある

 沖縄在住者が、米軍に何かを要求をすると、仮にそれが些細のなことや当然の
こと、あるいは簡単に対処できることでも、ただちに政治的な「極端な」反米運
動と考えて糾弾するのは、失礼でありかつ愚かなことです。
 80年前、私たち「内地」の日本人は、沖縄を捨石にして「国体」を守る事を選
びました。その後、「国体」は日米安保体制を選び、私たちはさまざまなかたち
で利益を得て、沖縄の人たちはさまざまなかたちで迷惑を受けています。
 県外での、沖縄に対する思いやりのない発言や礼を失した行動が、少しずつ積
み上がっていけば、「本土の連中のために誰が犠牲なんか払うものか、むしろ戦
中・戦後の貸しを回収させてもらう」という考え方が多数派になっても仕方ない
でしょう。
 米軍基地を支える電気・水道のインフラ、県内基地間の道路、そして約5万人
の米軍関係者(軍人・軍属・家族)の食料・医療などは、県内の民間人の協力が
なければ、とても確保できるはずがありません。有事の場合、これらは米軍の士
気や戦闘能力に大きく影響します。
 県民にとって米軍は不愉快な隣人たちです。米軍将兵のほうだって、同じよう
な気分でしょう。だからこそ、お互いの不愉快を最小限にして、間違っても許容
範囲をこえるようなことが無いようにするのが、日米安保体制下での国防の基礎
のはずです。政治家の無神経な発言は、仮に内輪向けのものでも、明らかに無知
に基づくものでも、かなりタチの悪い反国防的活動だと言えるでしょう