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だからなんなんだよ

12月20日(月)頃

とある行政施設の「インキュベーション施設」から、DVDも入っている豪華版パン
フレットが送られてきている。
アートディレクション効きまくりの、それらが入っているパッケージケースの裏面に
は、宣伝物なのに制作○×とか、撮影△■とか、デザイン×◎とか、いちいちクレジ
ットされているところが、とてもこの道の素人っぽい。

もう1年以上前になるのだろうか、この施設にはオープニングの際のイベントに、後
のパーティー代金込み一人3000円也を払って、若き起業家・藤田青年と一緒にお
話を聴きに行ったことがある。
シンポジウムにリナックスカフェ平川克美さんがいらっしゃったからだ。

今、それを思い出しているのであるが、その際、いきなり冒頭で「どうやってこれか
ら儲けてやろうと企図するIT関連の方には、全く反対のお話しをしますので、がっか
りしないで下さい」とおっしゃられ、「わたしはパワーポイントとか使いません」と
言って、白板にマーカーでグラフや年表を書きながら、ビジネスのシーンで儲かる/
儲からない、勝ち組/負け組の2分法で分けるのは知性のないことだし、ビジネスモ
デルとかいう言い方はもうこの時代にそぐう言葉遣いではない。
平川さんはそういう趣旨の講演をされて参加者を驚かせ、オレと藤田くんを笑わせて
いた。

だからこの「創業支援施設」の名前はよく覚えている。

ページをめくると、ファッション誌風インタビューページで構成されている。
○×市の経済局長、○×市立大の教授、著名な工業デザイナーに「フリーペーパーの
クリエーティブディレクター」…ほかの方々と一緒に、この施設の「コラボレーショ
ンマネージャー」や所長が紹介されている。
そして、その所長のプロフィールには93年に情報系NPOのDTP協会を設立し、国や府県
や市の事業企画に参画されていることが紹介されている。
見出しには「クリエーターのためのコンテンツ発信の一大拠点。それが○×(施設名
)である」というのが踊っているが、この若造りのおっさんは一体、何を言ってるの
だろうと思った。

NPOやTMOなどと同じように(そもそもこれもようわからんが)、ベンチャーとかイン
キュベーション、さらにSOHOといった新種のビジネス単語が時代用語化しているよう
で、さらにようわからん。
あんまりムカつくので、SOHOをうちの若い編集部員に聞くと「NYのあの辺りのこと?
」「ロンドンでしょ」「いや、ロフトで絵を書くとか」ということばかりで、肝心の
中身が出てこない。

若い編集者やライターの間では、こういう用語はうさんくさいIT用語で、現場で頻繁
に使うのは行政のおじさん系ですね、ははは、ということに帰着した。

こないだの平川さんのHPでも書きこまれていたが、スモールオフィスホームオフィ
スなんて、うちの記者さんカメラマンもみんなそうだし、昔からあった。
実家のある岸和田の下町では、おばさんたちが内職で家でだんじり祭の衣装を縫った
り、割り箸を袋に入れたりしている。

ちなみに弊編集部も経費削減のため十年以上も前からDTPだが、それ以上の何がある
んだろう。
ちょうど93年頃、フリーのデザイナーさんや佐川印刷の担当者と一緒に、イラストレ
ーターやクオークエキスプレスの試行錯誤で思いっきり苦労したことを記憶する。
NPOのDTP協会よ、行政になんか仕事=システム(油か?)を売りに行かないで、フリ
ーランスの彼らを助けてほしかった。

だから今さら、目次をインデックス、そこにぶら下がる内容や街ネタをコンテンツな
んて言い換えても、本質が余計ぼけてしまい、仕事をしなくて仕事をしているような
気分になるだけなことを、わたしたちは学んだ。

いちいちオレもしつこいが(平川さんも)、「ビジネスモデル」は「商売のツボ」、
「レバレッジモデル」は「ぼろ儲けのコツ」ぐらいにしておかないと、この末怖ろし
いことになる。

SOHO? So what? である。

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2004年12月28日 12:20に投稿されたエントリーのページです。

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