2月6日(木) 宇宙際タイヒミュラー理論を考える

 京大数理研の望月新一先生がブログで欅坂46について何か書いているという古い新聞記事を見て、「そんなことあるかな?」と半信半疑でブログを訪れてみると本当に書いておられた。すごいな〜と思いながら先生の他のブログ記事も読んでみると、「先生の言っていること、わかる、わかるぞ〜」の連続。特にヨーロッパの高名な学者が宇宙際タイヒミュラー理論を目打って混乱していることについて「欧米人自身の神格化・選民思想」が表れていると主張する記事については「あ〜、そういうこと、ほんまにありそうだな〜」と自らのヨーロッパでの経験と照らして説得力を感じながら読むことができたのであった。きっと高校生を想定読者に設定しておられるのではないかと考えられる。だから僕でもわかることを書いておられるのだろう。

 僕はもともと京大理学部数学科志望だったので、京大数理研には憧れがある。(中・高校の数学の先生はそこ出身だったし)

 欧米の学者が欧米人以外の知能を低くみるということは実際にある。とにかく欧米のお粗末な実態が権威主義的な環境を作り、権威主義的な教員が学生の学習意欲を削ぐ。ブダペスト大学の「言語学入門」1回目の授業で、アラビア系の教員が「音素と異音の違いはどのように説明できるか?」と問いかけたので、「音素は異音になります」と答えると「違う!」と食い気味に否定された。そして「誰だ、お前にそう教え教員は?」と畳み掛けてくるので、とりあえず僕は「音素と異音の関係は数学における(単射)写像のような構造だと説明できます」と答えたのだが、それ以降そのアラビア系の教員はあまり僕を相手にせず授業を進めることに決めたようだった。そしてその授業以来、僕の主張は基本的に"What?(はあ?)"であしらわれることになってしまった。関数の単射・全射は日本では高校生レベルの知識である。数学の進度が遅いと言われる欧米であっても少なくとも学部レベルだろう。このアラビア系教員の反応は、何処の馬の骨とも知れぬ留学生から指摘された間違いが「高校生レベルの初歩的な誤解」ということになれば、自分の権威が脅かされると恐れてのことだろう。

 一介の学部生の留学経験を超エリート研究者の望月先生の経験になぞらえて言うのは僭越だが、欧米の学問の実態の中には歪んだものがあり、その歪みは研究者だけでなく、大学院生だけでもなく、学部生、さらには高校生、中学生にまで明確に及んでいる。広範囲の社会的な弊害だ。それは事実であり、まともな批判を受けていない。健全な学習環境のために、それに関してはきちんと批判されるべきだと思うという主張には僕も一票を投じたい。