3月6日(水) 豊かなレキシコン

オックスフォード英語辞典(OED)には大体60万語の英単語が登録されている。英語話者がOEDに登録されているすべての単語を隅々まで記憶しているわけでは無いと思うけれど、英語がよくできる人は潜在的には60万語の英単語がわかるような気がする。一方で、海外留学に最低限必要な英語試験で求められる単語数は6000語くらい。残念ながら、6000語の語彙力と60万語の単語数の間には大きなギャップがあると考えざるを得ない。

日本の大学で、最も難しい入試に合格するために必要な単語数も6000語くらいだそうである。どうして日本人の英語のレキシコン(語彙力)はこんなにも貧しいのか?うまくいかない日本社会や、臭いものに蓋をして放置している問題が語彙の幅の狭さに現れているのではないだろうか。

どう考えても、6000語の語彙力は英語を理解するために不十分な語彙数だ。英語圏で生まれた成人の語彙数は2~3万語らしいが、それにしたってOEDに登録されている単語には少なく見積もってまだ残り57万語ある。それに加えて、SNSなどで日々発明されているような、OEDに登録されていない新しい単語もあるので、実際にはもっともっとたくさんある。

受験用に覚えた英単語だけしか使えないと、端的に「頭が悪くなる」という感じがする。「前もって」どうこうと言いたいときにいつまで経っても日本の単語帳に載っているリストから単語を引っ張ってきて、foregoing, before that~, previously~, だなんだと言っていると、脳みそと息がつまるような感じがする。Beforeなんとかという表現がダメなのではなく、"prescient"のように(*1)幅の広い表現があることを知っていたら、もっと豊かに表現できるし、息のしやすい英語になると思う。例えばの話。

A prescient warning. (OEDより)

有名な日本の作家のハルキ・ムラカミの英語スピーチでさえ「英語の語彙の幅」という一点の、ただそれだけのみに関して言ってしまうとそれほど豊かではないと考えざるを得ない。他の国の人と比べても日本人は皆、英語の語彙が際立って少ない。どうして日本人の語彙はこんなに貧しいのだろう。どうすれば語彙が増えるのだろう。語彙が少ないという状況は、どうすれば打開できるのだろう。

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(*1)prescientという単語を紹介している素敵なポッドキャスト→"Nerd Word", Revision Sound, https://podcasts.apple.com/jp/podcast/nerd-word/id1641406770?i=1000598315775