1/26(金) ウィーンへ

 19世紀にハンガリー帝国を解放へと導いた皇妃エリザベートは当時ヨーロッパで最も美しい女性と讃えられたにも関わらず、絶え間ない暴力と侵略がエリザベートに向けられたせいで決してその頭脳に美しいものを理解する余裕を与えなかった。ウィーンへ小旅行に出かけてエリザベートの生涯を展示した博物館を見てまわってそう思った。
 
 博物館には皇妃が使った小物類や家具なども展示されており、皇妃が使ったとされる東洋風の扇子を見ることができた。扇には綺麗な桜の花が描かれていた。どうして桜の花を選んで描いたのだろうか。

 開花時期を過ぎた桜の木の下を歩いたことのある者は誰でも桜の木が醜い毛虫に覆われることを知っている。王家の者に贈るのであればもっと特別な花を選んでも良かったのではないか。エリザベートは桜の花に満足しただろうか?いや、エリザベートは桜の花の醜さをどこか感じて見通していながらもその扇を愛し、その扇で構えをとったのである。

 日本で生まれ育った僕はこのことについてどう考えたらいいのだろう。