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2004年12月 アーカイブ

2004年12月17日

何を隠そう、これでいいのだ。

何を隠そう私は尺八部出身である。
ただしすぐに飽きてやめてしまったので、吹けるのは「しいろおじいにいああかあくう」の「日の丸の旗」だけである。
しかし尺八を初めて持ったそのときから割合きれいな音が出た。
先輩に「紙のように薄べったい空気を吐け」と言われて、その通りにしたらボーという汽笛のような音がすんなり出た。
「なんだ、音出るじゃん」と得意になったが、まあそれこそただ出たというだけのことで、尺八本来の音なぞゆめゆめ出ようはずがない。
しかしあのまま修行を続けていたら、今頃は新進気鋭の尺八吹きとして演奏会に引っ張りだこ、「竹の王子様」としてお琴のおばさまたちにちやほやされていたかもしれない。
今では居酒屋でビール瓶を吹き鳴らして嫌がられている。

劇場の仕事がたてこんできて苦しいなと思っていたら、本業以外の仕事も色々と仰せつかった。
だから単に仕事量が増えて辛いかというとさにあらず、楽しい仕事に熱中していると嫌な仕事を忘れられるし、楽しい仕事でエンジンの回転数が上がった余勢で嫌な仕事をぱっぱと片付けられる。ありがたいありがたい。ぱっぱっぱ。
近いところでは21日に上野の芸術的な大学で一日だけの集中講義。こちらに呼んでいただくのは三度目である。
前にも書いたが各種講座でお喋りをするのは伝統芸能業界にとって大変重要な責務であると思っていて、「アルバイトの暇があったら仕事しろ」と言われようが、びしっとリキを入れてお座敷をつとめるように心がけている。
レジュメを作りながらうきうきと話の組み立てを考える。
出席の諸君は歌舞伎の興行・運営の歴史と現状およびその問題点についての瞠目すべき考察の一端を垣間見て思わず腰を抜かすことであろう。
通信社系国際硬派週刊誌からは二回続きでスペースをいただけるとのご連絡。
前回は「中国の軍事改革」「ミャンマー政権の孤立化」などに混じってイタリアの「解剖学教室」や「蝋細工標本」について喋り立てるという暴挙に出たが、今回は「明治時代のヘンテコ歌舞伎」について書くつもりである。
なにしろ前回のはイタリアの文化財保護政策を鋭く批判したものだし、今回のは明治期日本の〈外国人〉イメージの形成を歴史社会学的に追究することになろうから、国際硬派誌にはうってつけであるのだ。
これでいいのだ。

2004年12月30日

樽酒と三番叟のお正月

鼻風邪が治らないなあ、と思っていたある朝ハタと膝をうった。こりゃ花粉症だよ。
ヤツとの戦いはすでに始まっていたのである。
機先を制されてしまったがまだ戦端は開かれたばかり。
挽回の余地はあると思い、耳鼻科に駆けつけた。
「検査で花粉の種類を特定することもできるんですがねえ。今日やりますか」
「そうですねえ」(今後の治療に必要ならやっていただきたいですがどんなもんでしょう)
「でも通うのは難しいですよね」
「仕事してますので平日は難しいですね」(ということはその検査のために何回か通院が必要ということですね)
「そんなら今日は飲み薬だけお出ししておきましょうかねえ、どうですか」
「そうですねえ」(先生が治療方針としてそれでよいとご判断なさるのなら異存はありませんけれども)
「今から三月ぐらいまでは続けてお飲みになった方がいいですねえ。今日はとりあえず一ヶ月分ぐらいお出ししときましょうか。どうですか」
「そうですねえ」(そういうものでしたらそれで結構ですけれども。様子をみてまた来てね、ってことですよねきっと)
先生さまあ、患者の私にいちいち判断を求められても困るだあ。
お医者には納得のいくまで説明を求める、というのは正しい態度だと思う。
しかし本日のようにあまり緊迫感を伴わない局面で、いちいち問い質してなんだかくってかかっているように思われても不本意なので、( )内の言葉は飲み込んで曖昧な笑顔を返した。
結局「アレグラ」という薬が一ヶ月分処方されることになった。
これまでの花粉症用の飲み薬はなにしろ眠くなるのが難点だったが、これは「パイロットが飲んでも大丈夫」という宣伝文句で、まず大半の人は眠くならないのだそうだ。
確かにちっとも眠くならずに症状はきちんと軽減している。
今シーズンはアレグラさんに期待をかけて3000点。
バイアグラの「グラ」と何か薬学的な共通の意味があるのだろうか。

で、水っ洟を垂らすことなく初春公演の稽古。
正月三日には樽酒のお鏡開きと三番叟で賑々しく初日が明き、和服姿のお客様がどっどどっどとお詰め掛けになる。
まことにおめでたい。
しかしお休みは大晦日と元旦の二日間のみというヤクザ稼業っぷりは、「東京の年末年始の風情」好きとしては非常につらい。
舞台稽古の合間に人気のないロビーから空を眺めると、もうすでに空の青が正月仕様になりつつある。
あああ、年末年始のお約束行事がなーんにもできてないよ。
早く帰ってお飾りつけなきゃ。

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