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2004年09月27日

「街のいけないうなぎ屋を正す会」の設立にあたって

9月25日(土)


やや二日酔い気味なるも、朝からちょっとだけ研究室へ行き、久しぶりに会ったT先輩
に実験の相談をする。

お昼から芦屋の体育館で行われたお稽古では、久しぶりに高雄さんにお会いした。

合宿も暑かったけど、芦屋の柔道場もまだまだ暑い。

合気道のお稽古の後は、梅田で開かれた研究会に出席。

昨日久しぶりに江編集長にお会いしたら、今日もまた岸和田の人に出会ってしまった。

一般演題5題の発表の後に行われた府立成人病センターのK野先生による特別講演は、骨髄移植における感染症のマネージメントに関するものだった。

講演の初っぱなに映し出された一枚目のプレゼンテーションが、いきなりだんじりの
遣り回しである。

「私は岸和田の出身で、だんじり祭りをしております。今年も何とか無事に祭りを終
えることができました。だんじりの見せ場の一つは、コーナーを速いスピードで駆け
抜けていくこの遣り回しです。遣り回しでは、前梃子と後ろ梃子の絶妙なコンビネー
ション無くしては、腰高の構造のだんじりはあっさりと倒れてしまい、死人が出るよ
うな惨事も起きかねません。骨髄移植における感染症の合併は、ときに患者さんの死
につながるものであり、移植の安全な曳航のためには、移植治療と適切な感染症コン
トロールのコンビネーションが必要不可欠なのであります」

と、K野先生のつかみはいきなりだんじり話である。

府立成人病センターは、日本にいち早く骨髄移植を取り入れた施設である。長年にわ
たって蓄積されたデータを元にしたK野先生の講演は、非常に興味深くかつ勉強になっ
た。

特に興味をもったのが、移植後の患者さんにおけるアスペルギルス感染症の地域によ
る発生頻度の違いの話。


アスペルギルスというのは、真菌(カビです)の一種で、普通の免疫力を持った人たち
には何ら病原性を持たないが、移植後などで、免疫抑制状態にある患者さんにおいて
は、ときに命を奪うほどの重症感染症を引き起こすことがある。

全国調査の結果、そのアスペルギルス感染症が、九州沖縄地方に多く東~北日本ではそれ程多くないという結果があるそうで、これは地域の降水量とかなり大きな相関があるらしい。

以前、アメリカのシアトルとヒューストンにある大きな病院間で、骨髄移植時のアス
ペルギルス感染症の発生頻度を調べたら、雨が多いシアトルでは発生頻度が高く、雨
が少ないテキサスではほとんど発生していなかったという話を聞いたことがある。

おそらく日本でも同じような傾向があるのだろう。

雨は結構多いと思うのだが、どういうわけか関西のアスペルギルス感染症は少ないの
だそうだ。雨以外にも発生頻度を左右する重要な因子があるのかもしれない。

いろいろなことを考えながら聴いていた50分間の講演はあっという間に終わってしまっ
た。

終了後、熱心な聴衆からいくつかの質問が出る。

そこに混じって、「だんじりのドビといわれる軸受けは各町によって様々な工夫がな
されており、そこにはときにF1カー並みのハイテクが導入されているという話を聞い
たことがあるのだが、先生の町ではどの様な工夫をなされているのでしょう?」と、質
問しようかとちょっと思ったが、そんなことを言ったらたぶんクビになるので我慢し
た。


クビになったら困りますもんね。マリちゃんの話も村上春樹に先に書かれちゃったし。
なんちゃって。



9月24日(金)


先日、「街のいけないうなぎ屋を正す会」(うな正会)というのを、ささやかだが確固
たる意志をもって設立した。

会のメンバーは江編集長(会長)、そして僕(副会長)の2名である。

この会の主な目的はふたつ。

1. 巷に流布している「脂ぎとぎと巨大ドーピング鰻」を戒める。

2. 近年忘れられつつある、うなぎに対する節度をもう一度世に問う。

以上。

そしてこの日、記念すべき、うな正会の初会合が肥後橋の「だい富」において開かれ
た。もちろん節度を持ってとてもささやかに開かれた。

「だい富」は、江編集長の『ミーツ』編集部がある京阪神エルマガジン社から歩い
て50歩のところにある江戸前うなぎの名店だ。

世間のいけないうなぎ屋に説教をかます前に、まずは「正しいうなぎ&正しいうなぎ屋」をふまえておく必要性があることから、会長はかねてからその実力を高く評価していたこの名店を初会合の場所として選定した。

マッチ売りの少女のように女の子が栗饅頭を売っている帝人ビルの前で会長と待ち合
わせた後、そこから徒歩30秒の「だい富」へ向かう。

ぼーっとしていたら、通り過ぎてしまいそうな程小さなお店だが、不思議な存在感が
ある。白い看板にかかれた「○に鰻」のマークがとってもシック。

引き戸を開けてお店に入ると、中にはテーブル席が四つ。もしかしたら2階にも席があ
るのかもしれない。

時分どきにも関わらず、先客は初老の男性4人連れがいるだけだった。客層といい人気の少なさといい、まさに「正しいうなぎ屋」という感じである。

清潔感があって上品なのだが、どこか気安い感じがするのは関西ならではのものだろ
うか。

接客は40代くらいのとても感じの良い女性。水色のTシャツとスカートの上から白いエ
プロンをしている。くるぶしが隠れるくらいまでの真っ白な靴下がとてもよく似合っ
ていた。

上着を脱いで、白いシャツとネクタイ姿でうなぎのコース料理を食べながら酒を飲ん
でいる4人のおじさん達は、ちょっとだけ小津映画の「若松」みたい。

うなぎの「竹」を頼み(注文内容にも節度が重要なのだ。うなぎのフルコースを違和感
なく頼めるようになるまでには相当の年期がいる)、ビールを飲みながら到着を待って
いると、15分から20分ほどで待望の「竹」が登場。

蓋を開けると、ほんの少しだけ透き通っているように見える艶やかな白いご飯の上に、
過不足ない大きさと厚さをしたうなぎの蒲焼きが静かに横たわっている。

ドーピングうなぎは肉厚で、蒲焼きの表面もまるでポマードでも塗ったかのようにき
らきらと光っているのだが、「だい富」の蒲焼きは、光り方に気品がある。表面がつ
や消しっぽくなっていて、張り替えたばかりの畳に少し似ている。

小さい頃、祖父の家でときどき食べさせてもらったうなぎの蒲焼きは、サイズといい、
色合いといい、こういううなぎだったような気がする。

一口食べてみると、一瞬で口いっぱいにうなぎ特有の香りが広がる。
しっかりした味付けなのにどこかさっぱりしていて、まったく嫌みがない。噛んで飲
み込むと、すぐに次の一口が欲しくなってしまう。

欲しいままに食べているとあっという間に無くなってしまいそうなので、会長に「た
まらんですなー」などとつぶやきつつ、ときどき肝吸いもすすったり、漬け物を囓っ
たりして間を取る。

うなぎと共に口に入るご飯がまた美味しい。丁度良い温度に冷ましてあるご飯はそれ
だけでも甘みがある。そして、そこにうなぎのタレが絡まるといっそう美味しくなる。
会長によると、この店では釜でご飯を炊いているそうである。

いやー、ホント旨かったです。会長ありがとうございました。

幸せの余韻に浸りながら店を後にして、江会長とともに四つ橋筋を南下。会長が会う
約束していたという、UFJ総研の川崎さん日隈さんと初めてお目にかかる。

4人で阿波座駅付近の和食のお店に移動し、さつま白波をかぷかぷと飲んだ。

大らかで行動力あふれる印象の“親分”川崎さんと、ポールスミスのシャツがよく似合
う、優しさとクールさが同居した“美男子”日隈さんは、風貌も、会話をつなげていく
発想もともに柔らかで、およそ普通の会社勤めの人たちには見えない。

江さんとお二人の仕事の話から始まった会話は、いつの間にか街レヴィ方面へ突入し、初秋の夜はあっという間に更けていくのであった。

翌日はちょっと二日酔いでした。

投稿者 uchida : 2004年09月27日 07:12

コメント

私も先日、ジモティーに導かれて、川越市の正しいうなぎを食べさせていただきました。メニューは鰻重が、大きさによって三段階あるのみ(あ、柳川もあった、そういえば)。鰻重の味も光り方も上品。そのうえ、ほんのりゆずの香る肝吸い、5色の淡い色のぬか漬けも絶品。古い木が磨かれた店内には、なぜかいつも小声で話すお客さんとお店の人たち。気どってないけど、背筋は伸ばして。そんな正しいうなぎ屋が、埼玉にもあるのでした。

投稿者 china loca : 2004年09月28日 00:09

浜松の鈴木です。
御無沙汰しております。
合気道でのブラックベルト取得、おめでとうございました。
手前は、今度4級の審査を受けることになっております。まだまだですね。
さて、「うな正会」の設立、心からお喜び申し上げます。
ぜひ一度、江会長と浜松までお越しいただき、「うなとろ茶漬け」を御賞味くださいませ。
お待ち申しております。

投稿者 すずき : 2004年09月28日 21:20

china loca様
5色のぬか漬けって素敵ですね。
一緒に世の中のいけないうなぎ屋を正していきましょう。ファイト一発。

鈴木先生
この度は、うな正会の設立にあたりまして心温まるお言葉を頂戴し、厚く御礼申し上げます。

すっかりご無沙汰しておりますが、お元気でいらっしゃいますか?
是非とも「うなとろ」食べに伺いたいです。あと、麻雀もご一緒したいです。

すずき先生の好きな役満は何ですか?僕はだんぜん国士無双が好きです。

審査、頑張ってくださいね。

投稿者 うな正会バイスプレジデント佐藤 : 2004年09月28日 23:44

すずきさん、ご無沙汰しております。

例の「うなとろ茶漬け」やっぱりうまそうっすね。
そういえば、裁判所関係の「先生」が多い大阪の西天満に「遠州」という店があります。
創業者はその名の通り、浜名湖の鰻を供すべく上方に出店して50年の店ですが、郷にいれば…と関西焼きで、それはまことに酒に合う丼で、うまいっす。

大阪には「菱東」(福島)、「ひし好」(北新地)と「菱」がつく鰻屋が多いのですが、それは江戸風の血統を示すしるしで、ひし好さんは、先代の女将が大阪空襲の時、タレの入った瓶を持って逃げたという逸話があるナイスな店です。

それにしても、
「僕は、ベンツを乗り回している離婚秒読みの若い医者という最低の人間だが(改めて書いてみると本当に最低だな)、普段からむやみやたらにうなぎを食べに行ったりしない位の節度は持っているのである。」(8月29日)
って、何回読んでも最高ですね。それに加えて、特上とか松とかをむやみに注文しない節度も加え、出す方も頂く方も「鰻は節度」なのだ、というわけで「うな正会」のPRでした。

よろしくお願いいたします。

投稿者 うな正会 江  : 2004年09月29日 17:22

ご無沙汰しております、ミヤタケです。
後期は大阪へ出稼ぎに出るため、ゼミに参加できず、ますます不義理をはたらいております。

うな正会、って心惹かれます。
鰻、大好き! 一番「ご馳走」な気がします。
「ベンツを乗り回す医者」ほどの甲斐性はありませんので、節度はうんとこさ備えています。
ぜひぜひ会員の末席に加えていただけませんか?

私の愛する鰻屋は、京都・寺町六角の「かねよ」ですが、
「錦糸丼」には布団のような卵焼きが乗ってて嬉しい・月に一度(?)二階で寄席をやっている・昼の鰻定食が800円くらいで毎日通ってそうな爺さんたちが粋に食っててイイ感じ、と、鰻以外のファクターが大いに絡んでいるので、うな正会の会長閣下やヴァイスプレジデント様がたには、いかがなものでしょうか?
視察されたことがあれば、ご感想を伺いたい気がします。

あと、岐阜県大垣市の「川貞」(?)も、
戦争中、先代の女将が壷に密閉したタレを庭の池に沈めて守った、店は焼けたがタレは残り、それをベースに育ち続けているタレを使用、というだけあって、若輩者ミヤタケには、衝撃的な美味しさでした。
特上鰻丼は、明らかに冥利に悪い(ミヤタケ家の言い方では「冥加に悪い」)ほどの鰻がのっているので、もちろん竹を食べました。
・・・というエピソードをさりげなく添えて、うな正会への入会申し込みとさせていただきます。
どうぞよろしくお願いします。

投稿者 ミヤタケ : 2004年09月29日 18:46

おお、ミヤタケさん。いらっしゃい。
「かねよ」とはしっぶいとこ、突いてきよるな。
うな正会、若頭筆頭として喜んで迎えますぞ。

でも、議論をふっかけるのはナシね。ぼくもだんじりの話はしないから。

どうぞよろしく。

投稿者 うな正会 江 : 2004年09月29日 21:22

おぉ、江さん、お久しぶりです! ・・・でも、若頭なの? 会長では??
ともかくも、お褒めと承認のお言葉、幸甚であります。

昨日、書き込みをして間もなく、IT奉行I本氏から「かねよ」支持のメールを頂戴しました。
ハイテクなI本氏も、ローテクな私も、同じ錦糸丼を愛しているとは、鰻の世界って平等でステキ!

ミヤタケ、人に議論をふっかけるようなヤボはしません。「へー」って聞く役を目指してます。
第一、美味しいご飯を食べてるときは、無言です。
長いモラトリアム生活を通じて「もっと奢ってやりたくなる食べ方」研究の蓄積がありますから、一度見てみてくださいよ♪

どうぞよろしくお願いします!

投稿者 ミヤタケ : 2004年09月30日 11:37

佐藤さん、ご無沙汰しております、ヒグマです。
先日はお忙しい中ご一緒いただきありがとうございました。

この前江さんに、うな正会入会を直訴しました。佐藤さんにも筋を通しとかな、とお電話つないでもらいました。鰻については全く無知で、そもそもちゃんとした鰻屋で節度を味わうという文化がこのかたヒグマにはありません。会員ナンバー04?でよろしくお願いいたします。旨い鰻に会いたい、心地よい節度に会いたい…。是非お声かけください!

また時間できましたら飲みにお付き合いくださいね*

投稿者 ヒグマ : 2004年10月22日 18:06

ヒグマさん、こんにちは。
先日はお世話になりましてどうもありがとうございました。

うな正会へのご入会、心より歓迎致します。

老舗のうなぎ屋で美味しいうなぎを頬張ったときに、鼻を通り抜けるむふっという「いきれ」が僕は大好きです。

近いうちに是非ぜひ。

投稿者 SATO : 2004年10月23日 01:01

さとうさん、こんにちは。

江さんもミヤタケさんもこんにちは。みなさん、ごぶさたしておりますです。

鰻に飛びつくと、江さんにまた「学生のくせに」とのび太に絡むジャイアンのごときバスの効いたジャブを見舞っていただくことになりそうなので、暖簾の外から匂いをかいで指をくわえておくことにします。

ところでUFJ総研のヒグマさん、ってエディーズのヒグマさんでしょうか??
別の方でしたらすいませんが、さとうさんの描写された風貌から察するに間違いないのではないかと存じます。

思わぬ繋がりに、おおっ、っとなったかんきでした。

投稿者 かんき : 2004年10月29日 00:52

江さんからメールいただいて拝見しました。はい、エディーズのヒグマです*
かんきさんもこの濃い軍団一門だったんですか?!
本当に世の中の繋がりって不思議ですね。また野球でお会いしましょう!

投稿者 ヒグマ : 2004年10月29日 17:20

かんきさんこんちは

実は僕も学生なんですよ。来年の4月までの予定ですが。
ですからどうぞお気になさらずに一緒に世の中のいけないうなぎ屋を正して行きましょう。

先日うな正会の小会合がありまして、当会の公式ソングが江利チエミの『カモン・ナ・マイハウス』に決定しましたので謹んでご報告致します。

投稿者 sato : 2004年10月30日 00:02

わーん、着々と集会がおこなわれてる!
ちゃんと大会を開催して、不肖ミヤタケも混ぜてくださいよー。

ナマハゲだって、ちゃんと知ってるもん!

子供のころ、寝る前に婆ちゃんが話してくれました。「泣ぐゴはいねが、寝ないゴはいねが」ってナマハゲが来るんだよー、って。
マジで怯えて寝るどころじゃなくなり、「ホントにいるの?」って半泣きで聞いたら、「ホントにいるよ」って、真顔で言われて、いやー、怖かったですね。何日も夢に見ましたもん。
・・・確かに実在するけどさー、祭にいるってことやんかー、「ホントにいる」の意味がちげーよ! ひでーよ、婆ちゃん! 
と真実を理解したのは、だいぶオトナになってからでした。

という節度ある(?)エピソードを添えて、参加への申し込みとさせていただきます。ぺこり。

投稿者 ミヤタケ : 2004年10月30日 15:23

みやたけさん

ぜひぜひ今度会合開きましょうね。楽しみにしてます。

楽天の新球団は「ゴールデンイーグルス」という出来損ないのグループサウンズのような名前に決まったようですね。じつにけしからんと僕は思います。

投稿者 sato : 2004年10月30日 23:20

なんだか「うな正会」盛り上がってますね。
ウチダも入れてください。
黙って待っていたら、そのうちドクターか江さんから「センセも行きましょ」というお誘いが来るだろうと、よだれ垂らして待っていたんですけど、みんな非人情ですね(泣)

次回の「うな正会」総決起集会には呼んでくださいね。おねがひ。

投稿者 uchida [TypeKey Profile Page] : 2004年11月06日 23:37

内田先生

うな正会に来て頂けるというコメントを頂戴しまして、誠にありがとうございます。
以前にもましてお忙しそうなご様子の内田先生をお誘いするのは、会長共々気が引けまして、遠慮を致しておりました。
第3回会合の際にはぜひぜひご連絡させて頂きます。

江会長、またそろそろ旨いうなぎを食べに行きませんか?

あと、会のネクタイピン作りませんか?
でもそれって、節度のない振る舞いかなあ…

投稿者 sato [TypeKey Profile Page] : 2004年11月07日 14:01

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