« 2005年7月 | メイン | 2005年10月 »

2005年8月 アーカイブ

2005年8月19日

「気になる患者がいるもので」(@山村聡in『東京物語』)

8月18日(木)

病棟勤務の傍ら、実験に追われている。
9月の半ばに学会があるので、それに間に合わせるためにいくつかの実験をしなければならなくなってしまった。すでに終わっていなければならない仕事なのだが、終わっていないのだから仕方がない。
16日の火曜日は日付が変わるまで実験をして、そのまま当直。実験室と医局がある研究棟は、当直をする大学病院の隣に建っているので、便利といえば便利だし、棟間のいちいちの移動が面倒といえば面倒である。
幸いにもこの夜の病院は平穏だったようで、ぐっすりと眠ることができた。夜の一時頃当直室のベッドに入って一度も起こされることなく朝6時に目が覚めた。朝になっても疲れが残っていたのだが、一度目が覚めると、二度寝しようにも上手く寝ることができず、仕方がないので実験室に行って昨日の実験の続きをした。
ひと段落ついた後で病棟に顔を出してみると、夜中に点滴が漏れてしまった患者さんがいたので、注射針を差し替えた。
一度医局に戻ってサンドイッチを食べた後、再び病棟へ。朝ご飯を食べると、急に眠気が襲ってきた。眠気をこらえて何とか午前中の病棟の仕事をこなし、午後からは港の近くの診療所で外来診察をする。この日、外来でみた患者さんはわずかに3名(疲れていたので助かった)。風邪が一名、高血圧が一名。そして最後の一人が、首のリンパ節がぼっこりと腫れている39歳の男性だった。
悪性腫瘍に伴うリンパ節腫脹の疑いがあったので、リンパ節を摘出して検査をしてもらうために、大きい病院の外科に紹介した。
首のリンパ節は、喉の炎症があったり、虫歯が悪くなったりするだけで容易に腫れてしまう。このような急性炎症にともなうリンパ節の腫れは、熱感と圧痛があり、触ると柔らかいのが普通である。しかし、悪性リンパ腫のような悪性腫瘍によるリンパ節腫脹の場合は、熱感が無く、無痛性で硬いリンパ節が触れる。今日、僕が外来で診察した患者さんのリンパ節は、悪性腫瘍の疑いが非常に大きいリンパ節だった。大きさは、うずらの卵と鶏の卵のちょうど中間くらい。彼は、一週間ほど前に右側の首が腫れているのに鏡を見ていて気がついたそうである。診立てが杞憂であることを望む反面、自分の推測が当たっていて欲しいという気持ちがあることに気がつく。

外来が終わってから大学に戻り、病棟の症例カンファレンスに参加する。自分の受け持ち患者さんについてのプレゼンが終わった後で、カンファレンス室をこっそり抜け出して実験室へ行き、翌日の実験の仕込みをする。実験が終わった後で、カンファ室に戻ってみたら、まだまだ議論は続いていた。

翌日は朝から堺の病院へ出張。午後から大学へ行き、まずは、受け持ち患者のKさんの本日の検査データをチェックする。検査データは、予想範囲内の動きだったので、昨日の実験の続きを行った後で、急いでカップラーメンをすすり、歯を磨いてから隣のビルの病棟へ。

気になる患者のKさんは、会ってみると思っていた以上に元気そうだった。
一通り病棟の仕事を終えてから、病棟の医師控え室に行ってみると、3人の若い先生たちがいた。T先生は論文を読んでいる。F先生は診療用コンピューターの前で、患者さんの検査結果を確認している。S先生は、白衣も着ないで部屋の中をうろうろしている。

彼らとひとしきり話をした後で、受け持ち患者さんの病室を廻った。悪性リンパ腫の治療で入院中のYさんと、大阪桐蔭と東北高校の熱戦について感想を述べあったりする。

その後、また実験室に戻る。そしてまた病棟へ戻る。Kさんと話をする。37度8分くらいの熱があるが、昨日よりも随分と元気が出てきたみたいだ。Kさんは白血病の患者さんで、60台後半の医師である。お見舞いに来ていた奥さんと3人で、西宮、芦屋の辺りの美味しい店の話をした。Kさんは、西宮に住んでいる。食べ物の話ができるというのは、元気になってきた証拠だと思う。
明日はきっと今日よりもまた少し熱が下がり、今日よりももう少し元気になっているはずだ。

About 2005年8月

2005年8月にブログ「ドクター佐藤のそこが問題では内科医?」に投稿されたすべてのエントリーです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

前のアーカイブは2005年7月です。

次のアーカイブは2005年10月です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。