病棟の日々
7月26日(火)
6月から入院患者さんの主治医をするようになって、何かと慌しい日が続いています。
3年半ぶりに病棟で医者をすると決まった時には不安もあったのですが、一緒に働いている先生達や看護師さんの助けを借りて、何とか2ヶ月近くを勤めることができました。
研究室で過ごすことが多かった大学院生時代も週に数度は出張先の病院や診療所で外来診療をしていたので、内科診療から完全に離れていたわけではありません。しかし、入院患者さんを担当して検査をしたり治療をしたりするというのは、外来診療とはやはりちょっと勝手が異なります。
病棟に復帰する前は、診療用コンピューターの使い方や、薬の微妙なさじ加減を忘れてしまったことを心配していました。しかし、いざ働き始めてみるとこういうことはどうにでもなるもので、ほとんど問題にならないことが分かりました。何か分からないことがあっても、周りの人に聞けばいいのです。嫌がらせとしか思えないほど複雑怪奇な大学病院の診療システムをすいすいと乗り切ってきた卒後4,5年目くらいの優しい後輩の先生たちが僕の質問に何でも教えてくれるのです。
「病理の検体って、何時まで受け付けてくれるんですか?」
「輸血のオーダーってどうやるの?」
「退院後初診の患者さんの外来診療時間をコンピューター上で予約しなければならないんだけど_」
「あの看護婦さん何歳?結婚してるの?」
後輩の先生たちは、僕の質問に対して何でも即座に回答してくれます。
では、実際に病棟勤務に戻ってみて困ったことは何でしょうか。それは患者さんとのコミュニケーションのとり方でした。当たり前すぎる答えで申し訳ないのですが、本当なので仕方がありません。
「インフォームドコンセント」という言葉は随分と一般的になりましたが、患者さんと情報を共有して治療を進めるというのは、やはりなかなか難しいものだと思います。
「良いとはいえない知らせを伝えつつ、希望を失わずに治療を進める」などという神がかり的な診療は、真面目に仕事をしていてはできない芸当のような気もします。
あと一月で病棟勤務は終わることになっているのですが、気を緩めずに何とか最後まで勤め上げたいものです。