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2004年12月25日

重層的な共同性の中で生きている

12月18日(土)その五軒屋町若頭寄り合い編

「おまえらなあ、オレはひろきくん(わたしの名前)の年(平成15年)、電話一本
やったんや。おまえ行ってくれるか、ハイわかりました、それで終わりや。こないし
てカシラに言うてもらえるだけでも、ええんちゃうんか」と今年、若頭連絡協議会の
本部詰めの任期を終えて町に帰ってくるAが言う。

こいつもいい男になった。本当にそう思う。

この夜の寄り合いは、年末の「火の用心」つまり青年団担当の夜警の慰労について、
元旦のだんじり小屋を開けての新年祝賀会の段取りの確認だったが、平成17年度若
頭筆頭(責任者)のM人は「すまんけど、昭和40年生まれの2年目と幹部、後、残
ってくれるか」と言った。

この年の若頭約5名は頼もしいし、実に粒揃いだ。
平成10年に80年ぶりにだんじりを新調してこの6年、全くたいした激突もなく数
々の遣り回しをしてきた今の拾五人組の技と気合いと安定感は彼らが築いたものにほ
かならない。

M人の考え方は、来年の若連協本部詰めに、五軒屋町若頭としては若い彼らの年から
出し、その人間が来たるべきその年の筆頭をする、という不文律を作ろうというもの
だ。これはなかなかいい思想だ。

「おまえらの年だけで話しして、誰出すか、今年中に決めてくれ。これはオレからの
お願いや」とM人は熱がこもる。

毎年各町から2名選出され、祭礼本部詰めになる若連に出るというのはつらい。
その年の祭は、自町のだんじりを離れ、警備にあたるというのがその使命だからだ。
だんじり祭の公的運営・警備は祭礼本部つまり年番、若連、梃子連、千亀利連合青年
団と警察で行う。それは祭を知らない者では成り立たないのだ、つまり神戸ルミナリ
エのガードマンでは決してできない。なかでも若連は、町の若頭と同様、祭礼運営の
中枢的存在だ。もちろん任期のその2年、一年中若連や年番さんほかの寄り合いも多
い。

オレは平成11年12年度と若連に出た。その年、若頭筆頭をする従兄に「すまんけ
ど、おまえ行ってくれ」と頼まれたからだ。

各町、誰が、どんな人間が出るかは微妙だ。だいたいうちのように2~3年目の若頭
を出す町が多いが、人のいやがる本部詰めに「筆頭をさしてもらったから」とわざわ
ざカシラをした翌年に出る町もある。

昭和40年生まれの若頭とわれわれ幹部数名だけ残った話し合いは、21町持ち回り
の来年の若頭責任者協議会と若連の執行部にあたる町についての情報、そして他町と
自町のそれらの考え方の違い、さらに将来のだんじり祭の運営そのものや警備のにつ
いての話、とまったくだんじりエキスパートな内容だ。

筆頭経験者で彼らより先輩のオレとM雄は顧問として、来年の筆頭のM人のこの考え
方を違う筋目から丁寧にまたきびしく説く。

彼らはこの後、この忙しい年末に何回も話し合うことだろう。
それは、子供の頃からのこと、青年団のあの年はおまえはこうでオレはこれこれこう
だった、拾五人組時はあいつはこうでオレはどうでとか、祭を軸としての過去の相互
間の人生の縁みたいなものに、今つまり来年の会社での仕事や家族の事情、言いかえ
ると町とか祭礼とかとは別の共同体でのことがらを重ね合わすことでもある。

だんじり祭においても、人は複数の共同体を重層的に生きている。それはコミュニテ
ィとか地域ボランティアとかいった耳ざわりのよい昨今のワーディングのものとは違
うし、意気や恩義とか貸し借りでも決してない。

投稿者 uchida : 2004年12月25日 10:48

コメント

平成15年、江さんが若頭筆頭をされていた時のHPを読ませて頂いた時から、だんじりは「一つの組織である」と理解しました。

本件も、まさしく「組織運営」に関する内容ですね。
(こう表現しきると、ちょっと味気ないですね~)

人、特にだんじりに生きる男達の場合は、やはり『花形』の位置に憧れ、常に最前線的な事柄(この場合は祭り)への参加を望んでいるのではないか、と思います。(素人考え、すみません)

しかしながら、どのような組織も、スポットライトをあびるポジションとバックヤードがある。
適正や指向によりポジショニングできる人事案件と、組織全体を考えて、いや組織とその周辺環境や団体への影響をも思考に加味し、行動できうる人物でなければ、その役目を果たせない案件、がある。
この場合は、言わずもがな後者。
この後者の役割を、おしん的辛抱強さ(う、表現が古くてわかりにくいでしょうか…)ではなく、真摯な気持ちで真っ向から挑戦できる人、そして役目をまっとうできる人、
それを組織では、「トップの器を持つ人材」と呼びます。

トップを経験された江さんが、
~祭りを通して岸和田五軒家町の拾五人組や青年団の皆さんに、
~メディアの仕事を通して才能溢れる編集者の皆さんに、
次の世代へのパスを渡しつづけておられること、
ほんまにかっこええわ、であります。

次代の江さんやM雄さん・M人さん、どんな方が人選されるのか、あるいは立候補されるのか、楽しみですね。

投稿者 ヤマナカ [TypeKey Profile Page] : 2004年12月26日 01:22

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